昼間に強い眠気に襲われるのは、「ナルコレプシー」と言われる、「睡眠障害」の一つかもしれません。
ナルコレプシーのいちばん基本的な症状は、昼間に強い眠気がくりかえしておこり、どうしても耐えられなくなってしまう「日中の眠気」で、「居眠り病」とも言います。
もちろん、日中の眠気は、前夜の睡眠不足のときや食後などの条件によっては誰にでも起こります。
しかし、ナルコレプシーの場合、よく眠っていても空腹でも関係なく眠気がおそい、また毎日くりかえして眠くなり、しかも一日に何度もおこり、それが最低3ヶ月以上続くというものです。
ナルコレプシーの有病率は推定値になりますが、日本では0.16%から0.18%と言われています。
そして、居眠りの発症は10代に多く、特に14~16歳に著しいピークを示します。
ですが、5歳の子供や40・50歳になってから発症する例もあるようです。
「情動脱力発作」り言われる、笑ったり怒ったりすると脱力するナルコレプシー特有の症状が居眠りより早く起こることはまれです。
そして発症に男女差は見られません。
日中の強い眠気だけではナルコレプシーとは確定されません。
- 日中反復する居眠りが、ほぼ毎日、3ヶ月以上持続する。
- 強い感情の動き(笑いや怒り、驚き)などで起こる姿勢筋の両側性の突然の緊張喪失発作 の存在
ナルコレプシーの症状は?
- 日中の強い眠気と睡眠発作突然
●強い眠気におそわれ眠り込んでしまう
- 情動脱力発作
●興奮したときなどに体の力が抜ける
「情動」というのは、「喜怒哀楽」のことですが、そういう感情が強くおこったときに、体の姿勢を保つ筋肉の緊張が抜けてしまうというものです。
情動でも特に、楽しくて興奮する、おかしくて大笑いするなど、陽性の情動にともなっておこりやすいのです。
瞬間的な脱力で、ちょっと体が沈む、首がガクンと沈むなどごく短時間のものですが、人によっては笑っている間、ずっと続くという場合もあります。
またまれには、その状態を止めようと焦れば焦るほどまた発作が繰り返され、重積状態になって、20~30分も持続することがあります。
脱力発作の出現頻度は一日に数回から、1週間に数回など、膝がガクガクする程度から、地面にくずれるように倒れるケースもあります。
倒れてしまうほど発作の強い人はそう多くはいませんが、その場に立っていられなくなる、物が食べられなくなる、手にもっているものを落とす、などがよく起こります。
また発作時には、顔面筋や発語筋にも脱力がおこり、そのために言語が不明瞭になります。
- 入眠時幻覚
●眠りかけに鮮明なおそろしい夢をみる
これは寝たばかりの時にひどく鮮やかで怖い夢をみるものです。
70~80%の方にみられ、特にこの睡眠障害が始まってからの数年間によく起こります。
自分ではまだ部屋のたたずまいなど分かっているくらいの、半分寝たようなときに、非常に鮮明な夢というか幻覚をみます。
誰かが、鍵がかかっているはずの玄関のドアを開けて階段をミシミシとあがって、部屋の中に入ってきてそこにいるとか、体の上にのしかかってくる、熊のような動物に食いつかれるとか、刀で切られる、触れられるなどといった生々しい現実感をともなった幻覚、幻聴、幻触が起こります。
あるいは、自分が空を飛ぶ、窓から出て行くといった浮遊感覚が起こることもあります。
- 睡眠麻痺
●幻覚にともなう金縛り状態
入眠時幻覚にしばしば一致して、「睡眠麻痺」という症状が起こります。
寝たばかりの時、覚醒と睡眠の移行期に急に体に力が入らない、声が出ない、起き上がろうとしても体が動かない、身動きできないという、いわゆる「金縛り」体験です。
これも、初期によく起こります。
ときには、呼吸が困難な感じもおこり、そのまま死んでしまうのではないか不安におそわれたりします。
単独で起こってくるときもありますが、多くは幻覚やおそろしい夢をともないます。
怖いから、逃げ出そうとしても手足が動かない、助けも呼べないという状態です。
- 自動症
●眠気のあるとき、行動を覚えていない
これは「自動症様行動」とも言い、普段半分くらい眠いとき、自分では眠いという自覚がないのだけれど、後でやったことを覚えていないということが起こるものです。
知らないうちに歩いていた、買い物をしていた、食べていたなどということが起こります。
- 夜間の熟睡困難
●睡眠サイクルの乱れにより熟睡できない
「レム睡眠」は、夢を見ていて脳の眠りが浅く、全身の筋肉の緊張が非常に低下している状態にあるます。
この時に、特徴的な急速な眼球の動きが見られ、大脳は覚醒時に近い状態にあります。これに対して「ノンレム睡眠」は、レム睡眠以外の睡眠で、おもに脳が休息をとっていると考えられています。
ナルコレプシーではこのレム睡眠が不規則で頻繁におこります。
寝言がひどく、臭いや肌触り、味覚などがともなった夢を見ることすらあり、それが一晩中つづくので、全く熟睡感は得られないのです。
- その他にも、頭重、頭痛、複視 複視
日常生活や社会での影響
- 本人にも病気であることの認識が乏しい
周囲の人ばかりでなく、本人にも病気という意識がない人も、少なくないのだそうです。
日常的にしょっちゅう眠くなるため、本人も眠いという自覚すらあまりもたなくなってしまいます。
本当にすっきりした状態を維持するのが普通なのか、眠っている状況と共存する状態がふつうなのかがはっきりしなくなります。
眠い病気だという意識がだんだんうすれてきてあきらめてしまう。こうなるといっそう深刻です。
昼に頻繁に眠気がおそってくるとしても、前もって自分で眠りそうなことが分かるのではないか、半分眠った状態で仕事をしたり、いきなり眠ってしますのはおかしいと、健康な人は考えるでしょう。
- 怠けていると思われてしまう
なかには、耐えられない強い眠気がおこって、突然に眠りこんでしまう「睡眠発作」をともなうこともありますが、多くの場合、緊張が強ければ何とか耐えられるくらいの眠さです。
昼間に眠ってしまうことは、電車で座っているとき、退屈な授業や、発言の機会のない会議中など、健康な人でも眠くなる状況ではいっそうおこりやすいので、周囲の人からはたるんでいるなどと誤解されがちです。
しかし、ナルコレプシーの場合、試験中や重要な商談中、自動車の運転中などにもおこり、これが職業上の失敗、学業成績の不振、事故などさまざまな不利益の原因にもなったり、社会的不適応をまねいたりします。
いったん眠気におそわれると10分ないし30分程度くらい眠りこみますが、眠りからさめた後は数十分間すっきりした爽快感が得られます。
おもしろいときや大事な仕事のとき、運動をしているとき、また一回や二回の眠気ならば我慢できます。
しかし、健康な人でも眠くなりやすい状況では我慢できず、しかもそれが毎日つづき、一日に何回もおこるため、結局は重大な状況でも眠気に負けてしまいます。
一生懸命がんばっても、たびかさなる強い眠気には打ち勝てないんです。
日中の眠気は、前日の睡眠時間が十分であってもおきます。
あまりに強い眠気のせいで、意思とは無関係にいつのまにか居眠りしてしまいます。眠気の強さは、健康な人が48時間も眠らなかったときに感じる程度といわれます。
しかし、正にそこがナルコレプシーの患者さんの症状と違うところなのです。
外見的には眠そうにボヤッとみえるのに、本人は自分が眠りこみそうだという予知が、なかなか出来ません。
予知できれば前もって横になって休めばいいのですが、それが出来ないため、仕事中のミスがおこりやすくなるのです。
- 周りから理解を得られず退職や転職
それでも学校時代は、勉強の能率が上がらず、自分本来の実力が発揮できないということはあっても、なんとか進級できます。
ところが、社会に出ると、給料をもらう立場になるため、周囲の人の見方も変わってきます。
お客様との商談中に眠ったとか、事故を起こしたなどということがあると、厳しくしかられたり、配置転換や退職に追い込まれたりします。
病気だということを自分で知らず、ちゃんとした治療を受ける機会が与えられないままですと、社会への適応力が小さくなります。
実際にあった話では、半分居眠りをしながら仕事をした銀行員が数字を間違えて失職してしまったということもあったみたいです。
つまり、目が覚めているときにはきちんとした能力を発揮するのに、眠い状態で仕事を続けることが多いため、集中力に欠ける、記憶が断片的になる、事故を起こしやすいなどの問題がおこり、信頼を失うことになってくるのです。
お電話ありがとうございます、
とも鍼灸治療院でございます。