子どもの「片頭痛」

頭痛は大人の病気というイメージがありますが、子どもの「片頭痛」も珍しくはありません。

小児の慢性的で反復性のある頭痛の57%は「片頭痛」によるものとの集計もあります。

日本人の大人の「片頭痛」の患者の半数以上は20歳以前の発症で、3分の1は15歳以下の発症と言われています。

世界の疫学調査をまとめた論文によると、「片頭痛」の頻度は、

●3〜7歳で1.2〜3.2%

●7〜11歳で4〜11%

●15歳で8〜23%

学童の10人に1人は「片頭痛」の経験を持つという数値もあります。

大人の「片頭痛」も、子どもの頃の発症が原因であることが少なくありません。

早いと、幼稚園頃から症状がみられます

子どもの「片頭痛」の発症は、どの年齢でもみられますが、発症のピークは5歳前後と10〜12歳です。

幼少時は男児の比率が高く、12歳を過ぎる辺りから女児の発症比率が高くなります。

子どもは頭痛があっても、言葉でうまく伝えられなかったり、周囲の大人から気のせいと言われたりして放置されてしまうこともあります。

子どもの「片頭痛」には、大人と比べて、

  • 頭の両側や全体が痛くなることが多い
  • 吐き気や嘔吐を訴えやすい
  • ズキズキと脈に合わせた痛みがある
  • 少し首を振っただけで痛みが増悪する

などの特徴があります。

また、光や音、においに過敏になることがあり、頭痛が起きると部屋を暗くして横になってしまう子どもは、「片頭痛」の可能性が高いということです。

「片頭痛」の誘因として、疲れや寝不足による影響もあり、夜更かしや朝寝坊は「片頭痛」の誘因になります。

さらに、休日の寝過ぎも血管を拡張させ、「片頭痛」の誘因になります。

そして、子どもには意外かもしれませんが、 ストレスが加わったときや逆にストレスから急に解放されたときなども、「片頭痛」の誘因となります。

日常生活での「片頭痛」の予防として、

  1. 日頃から規則正しい生活を心掛ける
  2. 夜更かしを避け、十分な睡眠を取る
  3. 早起きして朝食をきちんと取る
  4. 過大な心身へのストレスを避ける

上記のように生活習慣を変えることで、発症を減らすことができます。

 

子どもの「片頭痛」の特徴

  • 朝に発症することが多い

10歳以下の子どもでは、登校前の朝に起こりやすく、週末や学校が休みの期間は発症が減少します。

また、学校の帰りや帰宅後など、ストレスから解放されると起こることもあります。

  • 急に発症する

特に10歳以下の子どもに、急に頭痛が起こることがあります。

つい先程まで元気に遊んでいたと思ったら、急に顔面蒼白となって元気がなくなり、しばらくすると何事もなかったかのように再び遊びだしたりします。

  •  腹痛がみられることもある

子どもの「片頭痛」は、腹部の痛みを伴なうことがあります。

腹部の痛みの方が強い「片頭痛」は、腹部片頭痛と呼ばれています。

  • 頭痛が不明瞭なこともある

子どもの「片頭痛」は、大人のように痛みの強弱や拍動感がはっきりしません。

漠然と、額の中央当たりに痛みがあると訴えたりすることが多いです。

  • 睡眠を取ると軽減する

「片頭痛」の発作が生じると眠くなり、また睡眠によって痛みが治まることがあります。

  • 前兆として視覚に異常が出る

子どもの「片頭痛」の約20%に前兆がみられます。

前兆として最も多いのが、「目がかすむ」「光が見える」「物が歪んで見える」「大きさが変わって見える」などの視覚異常です。

  • 家族歴と関係がある可能性

子どもの「片頭痛」の7〜8割に、「片頭痛」の家族歴があります。

男児も女児も、母親からの遺伝が濃厚とされています

もし自分の子どもが「片頭痛」になったら?

頭痛を訴えている子どものうち、圧倒的に多いのが「片頭痛」です。

片頭痛は、発作時の痛みは強いけれど、ふだんは元気に生活ができる病気です。発作はふつう月に2~4回くらいです。

小児の「片頭痛」の誘因となるチョコレートやチーズなどの食物、強い日差し、人込みなどを避けるようにしましょう。

睡眠不足も誘因となりやすいので、生活のリズムを整えることも大切です。

強い光が誘因となっていたので、教室の席を窓側から廊下側へ移してもらったら、発作が起こりにくくなったケースもありました。

そして、どんな症状でも、まずは「認めてあげること」が大切です

初期の対応としては、軽い頭痛であれば、冷やされる心地よさと同時に、保護者が痛みをわかってくれたという安心感で、痛みが和らぐ場合があります。

「片頭痛」の場合は音や光がこたえるので、暗くした静かな部屋で寝かせることが大切です。

登校前に頭痛を訴えた場合は、いさぎよく「休ませる」のが正解です。

登校前に起きやすく、学校でも保健室で少し休めば良くなることから、周囲からは「気持ちの問題」などと軽く考えられてしまうことがあります。

また、「片頭痛」の子どもには起立性調節障害も多く、朝礼などでの長時間の起立不動の姿勢は良くありません。

心理的なストレスが原因となっている場合、「学校に行かなくてもよい」という安心感で症状が緩和する場合があるからです。

ただし、いくつの子どもでも、本人の意思を尊重しましょう。痛みが治まれば遅刻して登校できるケースも多々あります。

大人の「片頭痛」の何割かは、小児期・青少年期の発症が原因とされています。

子どもの「片頭痛」は大人のものとは特徴が異なるため、気付かれずに見過ごされてしまうこともあります。まずは子どもの訴えをよく聞き、病気を疑ってみることから始めましょう。

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