まず「投球動作」というものは、ものすごく「肩」や「肘」にとって、悪い影響をあたえているという認識が必要です。
わずかな短い時間の中で、静止していたボールに力を伝えることになるのですが、ボールをリリースする瞬間には引っ張られる力が肩関節に作用し、ボールがリリースした後には圧迫される力が肩関節に作用するとされています。
成人の前方関節に投球する度、壊れるギリギリの力がかかっていることになります。
この負荷に耐えるために、身体は微妙なバランス調節をして投球フォームを形成しています。
しかし、コンディショニング不足や疲労などからフォームが乱れてくると、この負荷が関節を壊し始めてしまうのです。
これは、野球に限らず、ハンドボールやバレーボール、テニスなどボールを上から投げたり打ったりするスポーツに共通して言えることです。
投球動作は、足のつま先から手の指先まで協調した動作によってなされ、この連続した動作を「運動連鎖」といいます。
肩や肘にかかる負担が最小限の状態で、速いボールを投げるためには、下半身から体幹、肩甲帯、上肢、指先へと連続する効率の良いスムーズな運動連鎖が必要となります。
しかし、
- ①.コンディショニングの不良
- ②.オーバーユースによる疲労
- ③.スキル不足
これらによって、機能の低下を補おうとするためにストレスが増大します。
そして、股関節や体幹、肩甲骨周囲に問題が生じることで、肩や肘に過剰な負荷がかかり障害が発生している場合が多いです。
機能障害
最も肩や肘の障害に関係するのが肩甲帯の機能障害です。
具体的には肩甲骨周囲にある筋肉の硬さや弱さのために、投球動作中に肩甲骨が適切な位置に動くことができなかったり、上肢を支えるだけの安定性がなくなっている状態です。
ボールへ与えるエネルギーの半分は上肢と肩から伝えられますが、残りの半分は下肢の筋力と体幹の回旋力から生み出され、肩甲骨を介して上肢へ伝えられます。
この力の伝達の要である肩甲骨がうまく機能しなくなると、下肢と体幹で生み出された大きな力が効率よくボールに伝わらないだけではなく、肩や肘に無理なストレスをかけてしまい障害を起こします。
次に問題になるのが股関節の機能障害です。
股関節が硬くなったり安定性が低下すると、軸足で上手く立てなくなり、バランスを崩したりフォームの始動が乱れたりします。
また、ステップ足への並進運動が乱れたり、体が開きやすくなります。この結果、運動連鎖が乱れ肩や肘に負荷がかかることになります。
体幹の機能も重要で、胸腰椎の柔軟性が低下していると肩甲骨の動きも低下します。
パフォーマンスの高い選手は、投球時に背中がきれいにしなっていることからも体幹の柔軟性や筋力の重要性がわかります。
これらの機能障害の原因は投球動作自体にあります。
ボールを投げる度に肩には約100kgの負荷がかかり、ボールが手を離れた直後には、肩甲骨周囲の筋肉に強い遠心性収縮が起こります。
遠心性収縮とは筋肉が伸ばされながら収縮することですが、筋肉に負担がかかりやすく微少な損傷を引き起こすとされています。
これらの負荷や微少な損傷の繰り返しによって、肩甲骨周囲の筋肉を中心に過緊張や短縮、筋萎縮などが生じ機能障害が生じることになるのです。
日常生活で予防
上記してあることは、身体が発達段階にある青少年ではこの機能障害が多くみられます。
では、実際にどのようなことをすれば、このような機能障害を未然に防ぐことができるのでしょうか?
それは、日常の練習での
- メンテナンス
練習前のウォーミングアップや練習後のクールダウン
- コンディショニング、
練習以外での筋力の強化や柔軟性の向上
- 投げすぎなどのオーバーユース防止
- スキルの向上
これらが重要になってきます。
しかし、投球動作の危険性を意識して機能障害の予防をしている選手や指導者はわずかだと思います。
その結果、肩甲帯や股関節などの機能低下に気がつかないままスポーツ活動を続けてしまい、肩や肘に障害が起きてしまうのです。
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